コロナ禍の影響によるマスク生活が始まり1年以上が経過。
ワクチン接種は急ピッチで進んではいるものの、マスク生活は当分の間続きそうです。

その様な状況のなか、最近よく話題に挙がるのがマスク口臭
国内のみならず、複数の海外メディアでも取り上げられています。
みなさんの中にも自身の口臭に気づいた方がおられるかもしれません。

マスク装着により、鼻と口の周りが閉鎖空間となり軽い息苦しさを感じ、つい口呼吸になる傾向があります。口呼吸は口腔乾燥を招き、さまざまなお口のトラブルを引き起こします。

通常、唾液は健康な人で1日1~1,5リットル分泌されます。

唾液の役割として、糖の分解や味覚の促進、粘膜保護、発音や会話をスムーズにする他に、食渣の洗い流しやph緩衝能、抗菌作用で細菌の繁殖を抑える重要な働きがあります。

口呼吸による口腔乾燥が唾液の機能を抑制し、細菌の繁殖を助長します。
これが口臭の増悪につながります。

口臭とは、「口あるいは鼻から出てくる気体のうち、社会的容認限度を超える悪臭」と定義されます。正常な匂い(生理的口臭)や飲食物の匂いとは区別し、病気やその他の原因で他人に不快な気持ちを与える匂いを一般的に口臭と称します。

口臭は、原因により特徴的な匂いを発する場合があります。

糖尿病のアセトン(甘酸っぱい)臭や腎不全のアンモニア臭といった全身疾患(代謝性疾患)の兆候として現れる呼気経由の口臭は限定的なものです。

口臭の大部分(80%以上)は口腔内が由来であり、主要原因物質は揮発性硫黄化合物(VSC)です。VSCの多くは、舌苔と歯周病患部(歯周ポケット)に多く生息している嫌気性菌が産生します。

舌苔は最大の口臭源で、約60%を占めます。舌苔とは舌の表面に溜まる白い垢(あか)で、温泉や卵の腐ったような臭いと表現される硫化水素(VSCの1種)を多く発生します。

硫化水素は青酸ガスに次ぐ毒ガスで、普通の口臭濃度である0.3ppmでも気分が悪くなることがあります。

一方、歯周病は硫化水素よりさらに強い悪臭(生ごみ、キャベツの腐ったような臭い)を放つメチルメルカプタン(VSCの1種)を大量に産生します。

また、口臭を違った側面で見てみると、

▷日内変動があり、食事など口腔活動から時間が経過するほどVSC濃度が高くなる。
▷男女差、年齢(VSC要因を排除)に有意な差は認められない。
▷歯垢、う蝕の影響はほとんどない。
▷自己評価と実際の口臭の有無とは相関しない。

という実態が報告されています。

口臭の最大の原因は舌苔と歯周病であり、口腔乾燥がもたらす口腔内細菌の増殖が増悪させます。

マスク生活のなか、口呼吸による口腔乾燥に注意し、歯科クリニックでの専門的口腔ケアがマスク口臭対策には大いに役立つ事でしょう

本田歯科クリニック  歯科医師・歯学博士  本田準虎